盗まれたコンサート
ラウラ・マンチネッリ( Ⅼaura Ⅿancinelli )はヴェネツィアのコムーネ、ウーディネ出身のドイツ研究者・中世史の研究者です。歴史書のほか、音楽に関するエッセイや小説も数多く著わしていて、ざっと挙げただけでも『ニーベルンゲンの歌』(1969年)、『モーツァルトの幽霊』(1986年)、『島の音楽』(2000年)、『ラヴェルの音楽を愛した少年』(2011年)など、枚挙にいとまがないほど。
短編「乗っ取り!」もまた、クラシック音楽にまつわるユーモアたっぷりの作品です。主人公ラスコル二コフはまじめで心根の優しい、どちらかといえば控えめなタイプの音楽教師。そんな彼が、なんと先日、演奏を依頼され招聘されたドイツのピアニストの音楽会を乗っ取ったというのです。「あの大人しい彼が、本当に?」「でも、音楽会を乗っ取るって、いったいどうやって?」
そんな噂も収まる気配をみせはじめたころ、その乗っ取りの現場をこの目で見たというふたりが現れて、噂が再燃! しかもその目撃者はラスコル二コフを良く知る、彼の友人夫妻だというのです。引っ込み思案の彼がなぜ、こんな大胆な計画を立て、それを実行したのか? 推理小説仕立てのヒューマン・コメディはいつしか、人間心理の二面性を表白する軽快なサイコサスペンスへと変貌します。
★ 写真は若き日のラウラ・マンチネッリの肖像です。
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