香川真澄の部屋

紀元2世紀にリュディア(現トルコ、アナトリア半島)で発行されたヘラクレスの肖像銅貨を入手しました。裏面には桂冠を咥えて立つ鷲が意匠されています

リュディアは紀元前7世紀にコインが初めて発行された国です。それはエレクトラム金貨と銀貨ですが、この画像にみる銅貨は、ヘラクレスの肖像を打刻したものとしては最後のものだと思われます

紀元3世紀、古代ローマのネロ帝やゴルディアヌス三世帝などの発行した銀貨にヘラクレスの立像が打刻された例はありますが、それはこの英雄の全身を意匠したものです

イタロ・カルヴィーノはおよそ一か月間、日本に滞在していました。しかし旅行の初めは彼に、それほど良い印象を与えなかったようです

東京から京都に向かう列車のコンパートメントで、カルヴィーノは穏やかで慎ましい少女とたいへん尊大にみえる老婦人と同席します。「一言で言えば、彼女はひどくて不快な老婆です!彼女は非常にわがままで、生意気です!彼女は怪物です!…いったい自分を何様だと思っているのでしょう!」

けれどもカルヴィーノはその後、京都の美しい庭園にこころ慰められ、安倍公房や川端康成らを知って文学談義に花を咲かせるうちに、たちまち日本の魅力にとりつかれてしまうのです

スフィンクスをあしらった古代のギリシャコインを入手しました。スフィンクスは以前ご紹介したゴルゴンやペガサス、グリフォンと同じように幻獣の一つで、本来は大きな翼や尻尾がついています

入手した銅貨は紀元前260-230年にパンフィリアで発行されたものですが、この図柄は古代ローマのコインにも受け継がれました。 下の図にあるのはアウグストゥス帝の裏面と、アントニヌス・ピウス帝の裏面に打刻されたものです

ジョルジョ・ヴァザーリはもちろんのこと、レオナルド・ダ=ヴィンチよりも以前に、レオン・バッティスタ・アルベルティと同じころに書かれたチェンニーノ・チェンニー二『絵画術の書』。ちなみにこの本は私のイタリア語の先生である望月一史さんも翻訳者の一人です

イタリアのNobel文学賞作家グラツィア・デレッダの代表作品『風にそよぐ葦』Canne al vento 1913年 が橋本清美さんによって翻訳され、創英社から刊行されました。これは楽しみですね!

今年2025年の10月に発刊予定のグラツィア・デレッダ表題作品集『詩人の家』の裏表紙には、デレッダのモノクロの肖像がデザインされています。これは作家の写真を加工したり、イラストとして描かれたものではありません

昨年訪れたデレッダの故郷サルデーニャのヌーオロにある生家近くの市立図書館前の壁に落書きされていたものを撮影し、少し加工して意匠したものです。この落書きの撮影者はイタリア・エッセイ集『マンゾーニに会いに』でダーチャ・マライーニやダリオ・フォのエッセイの翻訳を手伝ってくれた、わかな愛理さんです

ノーベル文学賞作家にしてサイコ・サスペンスのように面白い小説を書く稀代のストーリーテラー、グラツィア・デレッダの短編集の表題作品だけを集めた全12作品を収録。香川真澄訳。B6判。300ページ(うちカラーページ4枚)

ISBN978‐4‐9908912‐3‐7

【収録作品】

客人/誘惑/闇の女王/イル・ノンノ/明暗/隠された子供/森の中のフルート/愛の封印/詩人の家/ナターレの贈り物/海の上のぶどう園/レバノン杉

およそ五十年にわたる長い作家生活のあいだに、グラツィア・デレッダはたいへんな数の作品を産み出しました

記録にあるだけでも、長編小説(中編二編を含む)三十六編、短編小説三百編以上、加えて一冊の民話集、二冊の詩集、六編の戯曲、六編の童話にニ十冊に余る書簡集、これにサルデーニャ・ヌオロ近郷の民族研究やバルザックの長編小説の翻訳、同郷の作家の評伝などを加えると、目眩がするほどです

イタリアのサルデーニャ島ヌーオロにある生家は現在グラツィア・デレッダ博物館として公開されており、そこには作家のほぼすべての著作が展示されていました


 写真は所蔵のレオナルド・ダ・ヴィンチの本で最大のものと最小のものです

 最大のものは縦35.5センチのラディスラオ・レティ『知られざるレオナルド』で、最小のものは10.5センチのMaria Luisa Righini Bonelli『LEONARDO・Le Macchine』L3500. 

レオナルドについての蔵書はイタリア語、英語の図書を含めて100冊以上あると思います

もう35,6年前になります。 イタリアのアオスタ渓谷だったか、クールマイヨールだったかを旅していたとき、小さな書店に Giovanni Arpino の”Le mille e una italia"が山積みされているのを見かけて、すぐに興味を惹かれて購入しました

翻訳してみたいと思っていたのでパラパラと読み、最初の数ページをコピーして持ち歩いていましたので、内容はリッチョという少年がイタリアを縦断して、ピランデッロとかムッソリーニとか、聖フランチェスコとか、各地の著名人と出会い、会話する児童向けの話だということは知っていました

この本がすでに日本語になっていることを知ったのは、その後20年近くたったあとのことでした。それまで、ジョヴァンニ・アルピーノは短編2,3篇しか邦訳されていないと思っていて、そのことをいくつかの場所に書きもしていたのです

翻訳された本がなんとわが県の県立図書館にもあることを知ったのは数日前。そして、取り寄せて手に取って読み始めたのはつい昨日の朝のことでした

2年前の2023年に、ヴェトナムではじめてグラツィア・デレッダの長編が翻訳され出版されました。翻訳されたのは、イギリスの作家でサルデーニャ島を旅したことのあるD・H・ロレンスも愛した『母₋La madre』 (1920)です

「美しい夏」8/1より全国順次公開

イタリア文学界の巨匠チェーザレ・パヴェーゼの同名小説をラウラ・ルケッティ監督が現代的な感性で映画化。青春の輝きと残酷さを描き、第77回ロカルノ国際映画祭や「イタリア映画祭2024」でも上映され、観客を魅了した(Istituto di Cultura Tokyo 公式サイトより)