ディーノ・ブッツァーティのジャーナリズム作品の中で最も恐ろしい物語を三つ挙げろと言われたら、ぼくは躊躇なく次の三作品を差し出す。すなわち①「身代わり人形の話」②「ロンドンの怪物についての証言」③「ヴァヨントの少女人形」
最初の①「身代わり人形の話」は『神秘のイタリア』に収録されているルポルタージュ作品で、いわゆる呪いの藁人形のイタリア版。次の②「ロンドンの怪物」はロンドンで起きた連続殺人事件を追う捜査官が現場の住人に聞き取り調査をした際の詳細な証言記録だ
①と②は邦訳されている。③は未邦訳作品で、ブッツァーティが故郷のヴァヨントで起きた大災害を取材した際の体験をつづったもの。災害で命を落とした少女が霊となって、盗まれた人形を取りもどしに来る話で、その場にいたブッツァーティが少女の霊(らしきもの)を実際に目撃している
★写真はそのルポルタージュに名前が出てくる芸術家ニキ・ド・サン・ファルと彼女がある時期から制作を開始した少女人形「ナナ」のデザイン