香川真澄の部屋

ディーノ・ブッツァーティのジャーナリズム作品の中で最も恐ろしい物語を三つ挙げろと言われたら、ぼくは躊躇なく次の三作品を差し出す。すなわち①「身代わり人形の話」②「ロンドンの怪物についての証言」③「ヴァヨントの少女人形」

最初の①「身代わり人形の話」は『神秘のイタリア』に収録されているルポルタージュ作品で、いわゆる呪いの藁人形のイタリア版。次の②「ロンドンの怪物」はロンドンで起きた連続殺人事件を追う捜査官が現場の住人に聞き取り調査をした際の詳細な証言記録だ

①と②は邦訳されている。③は未邦訳作品で、ブッツァーティが故郷のヴァヨントで起きた大災害を取材した際の体験をつづったもの。災害で命を落とした少女が霊となって、盗まれた人形を取りもどしに来る話で、その場にいたブッツァーティが少女の霊(らしきもの)を実際に目撃している

★写真はそのルポルタージュに名前が出てくる芸術家ニキ・ド・サン・ファルと彼女がある時期から制作を開始した少女人形「ナナ」のデザイン

ディーノ・ブッツァーティは1963年10月19日から11月19日までの一か月間、コッリエーレ・デッラ・セーラ紙の海外特派員として日本に滞在していました。その間に書いた記事は全部で15本。記事は書かれる端からミラノの本社に送られて、新聞記事として発表されました


そのうちの一つに「日本の捜査 Indagini Giapponesi 」があります(他の個所では「東京の二つの事件」として発表)。この中に、当時、戦後最大の誘拐事件として日本を震撼とさせた「吉展ちゃん事件」が採り上げられていました。ブッツァーティ滞在中にはこの事件の犯人は捕まっておらず、捜査中の事件として書かれています


筆者は同じ年(4歳)である吉展ちゃん事件に当時から衝撃を受けていました。記事ではどういうわけか、吉展ちゃんは当時7歳と書かれていますが、この事件のころブッツァーティが日本に滞在していたのかと思うと、なんだか不思議な感じがします。なお、この記事も『Dの犯科帳‐狼の邪悪なうた』に収録しています

ディーノ・ブッツァーティの数千ものジャーナリズム作品の中から選りすぐったルポルタージュ8点を集めて刊行しました。実際に起きた事件にリアルタイムで挑む著者の原点にして到達点。イタリア版「マリィ・ロジェの謎」です。すべて本邦初訳で収録作品は以下の通り

 《収録作品》

死者と暮らして

アルナルド・グラツィオーシの犯罪

調べ尽くされた貴婦人

ポレージネの洪水

連続殺人犯ジョン・レジナルド・クリスティ

日本で起きた怪事件

トレヴィーリオの怪物

死に憑かれた空挺部隊

アキッレ・カンパニーレ、」カルロ・コッローディ他『叱られっ子‐ユーモア作品集』(イタリア文藝叢書‐7.:最終巻)が宇部日報に紹介されました。七段抜きカラー版。誠に有難うございます。

来年1月に刊行予定のイタリア文藝叢書‐7.アキッレ・カンパニーレ、カルロ・コッローディ他『叱られっ子‐ユーモア短編集』が印刷会社から届きました。 12年かかったイタリア文藝叢書(全10巻)の最終巻です。  第一部にはカンパニーレの短編13作品、第二部にはコッローディ、エンニオ・フライアーノほかの作家によるユーモア短編が7作品、  収録されています。

2025年1月に刊行予定の『叱られっ子‐ユーモア短編集』の表紙写真に使用できないかと、この写真の管理者に打診していました。しかしその承諾を得られたのは『叱られっ子』の編集を終え、表紙も見切り発車で使用させていただいた直後のことでした

この写真は昨年2023年にイタリア・アブルッツォ州のキエ―ティにあるマッルチーノ劇場で上演された、アキッレ・カンパニーレの原作を基にした舞台『哀れなピエロ』の一場です。テアティーヌ劇団の「大人になったら大人になりたい」が演じています

なお、この『哀れなピエロ』は人気舞台らしく、今年2024年10月にも舞台芸術学校の学生らによって上演されていました。機会があればぜひ観劇してみたいですね

来年(2025年1月)刊行予定のイタリア・ユーモア短編集『叱られっ子』には、ねずみとねこのために発刊される新聞について書かれた、それぞれ作者の違う二篇の作品が収録されています

エンニオ・フライアーノ「ある夜のねずみ」は、街を占拠したねずみたちの気性を和らげるために発行された新聞の話

ジャン二・ロダーリ「ねこ新聞」は、仕事にあぶれた外猫たちのために設けられた、ユニークな新聞の求人欄の話です

どうぞご期待くださいますよう

ジュゼッペ・ポンティッジャ Giuseppe Pontiggia (1934-2003) はロンバルディアのコモで生まれた作家です。大学の卒業論文はイタロ・ズヴェーヴォで、エリオ・ヴィットリーニの推薦によって作家になりました。1989年には『大いなる夜』によってイタリア最高の文学賞であるストレーガ賞を受賞しています

日本においても『明日、生まれ変わる』をはじめ、拙訳短篇「ぼくの叔母さん」が翻訳・紹介されてます

1959年に刊行された『銀行の死』はポンティッジャの最初の本で、刊行当初はまったく注目されませんでしたが、徐々に評判になり、のちに本書から、イタリアで刊行された多くのアンソロジーに短編を提供しました

ユーモア短編集『叱られっ子』にはこの短編集の中から「色しか見えない!」という、不思議でユーモラスな作品を収録しています


 ジョルジョ・マンガネッリ(1922-1990)はミラノ生まれの前衛作家、文芸評論家、ジャーナリストで、エドガー・アラン・ポーの全作品をはじめ、T.S.エリオット、ヘンリー・ジェイムズ、エズラ・パウンド、ロバート・ルイス・スティーヴンソンなどの作品のイタリア語訳、紹介者でもあります。   かれは前衛的文学運動である「グルッポ63’」のメンバーで、代表作『百物語 Centuria 』(1979年/1995年)でヴィアレッジョ賞を受賞しました。イタロ・カルヴィーノはかれを「色褪せないことばと発想の発案者であり、他の誰にも似たところのない唯一無二の作家」と称賛しました

来年刊行予定の『叱られッ子 ‐ ユーモア作品集』では、この『百物語』の百一編の掌編の中から、巻頭の一編および、他のアンソロジーに収録された、名作と評判の高い二篇を収録いたします

『百物語 Centuria 』はある時期、国書刊行会の「文学の冒険」シリーズの一冊として翻訳・刊行が予定されていましたが、何らかの理由でリストから外されました

来年2025年にデレッダの短編集を2冊刊行予定です

Grazia Deledda (1871-1936) はサルデーニャ島生まれのNobel文学賞受賞作家です。彼女は当時ヘルマン・ヘッセかトーマス・マンが受賞するだろうという  大方の予想を退けて、1926年 に、史上2人めの女性による受賞者となりました

現在残っている短編集は18冊、およそ300編の短編を書いています。このたびはそのうちの20~30編の短編を邦訳、紹介する予定です。写真も豊富に収録いたします

サルデーニャ島ヌオロ市の市立図書館には日本の漫画コーナーがあって、鳥獣戯画から「鬼滅の刃」「天気の子」まで、かなりのスペースにイタリア語に翻訳されたコミックが展示されていました

このたびの旅で買った本、戴いた本です。 ①はローマやサルデーニャ島、フィレンツェの書店で買った本 ②はヌオロの市立図書館で戴いた除籍本  ③はナポリの Ewa Kara さんから戴いた本


① Ada Negri "Ⅼo sempre,io sola."

 Edoardo Sanguineti "Poesie italiane del novecento"1

 Edoardo Sanguineti "Poesie italiane del novecento"2

 Grazia Deledda "Tutte le novelle"volume1

 Grazia Deledda "Tutte le vovelle"volume2

 Dino Buzzati "Ⅼa nera"

 Grazia Deledda "Ⅼettere inedite di Grazia Ⅾeledda"


②Emilio Praga "Tavolozza" "Penombre"

 Eduardo Ⅾe Filippo "Ⅿia famiglia"

 Eduardo Ⅾe Filippo "Ⅼa grande magia"


③Amalia Galante "Ìl cristianesimo nella Storia e il "pensiero" dell'uomo nel tempo che gli fu assegnato "

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