母無き娘の悲しみ
アダ・ネグリ( Ada Negri 1870-1945 )はミラノ近郊ローディで生まれた詩人・作家。貧しい家庭に生まれた彼女は小学教師となり、のちに詩人としてデヴュー、詩集に『運命』1892年、『あらし』1896年、などのほか、欧米で大ヒットした自伝小説『あけの明星』1921年などがあります。
女性作家アンソロジー収録予定の「シルヴェストラ」は、3人の娘を描いた三部作のさいしょの一篇で、母親を亡くして寄宿学校にあずけられた幼い娘の秘められた悲哀を描きます。今年3月に母を亡くした僕は、あらためてこの小品を読み返して、抑制されたペンによる描かれざる娘の悲しみに、胸を衝かれる思いでした。著者のアダ・ネグリもまた、亡き母への思いを生涯胸に秘め、その面影を多くの作品に刻み続けた詩人でありました。
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