ヴァレリアヌス帝
.
これは「変わり種」と言って笑ってしまうにはあまりにも気の毒な皇帝ヴァレリアヌス(在位253-260)の話。
軍人皇帝時代の259年、ローマ帝国にとってもっとも恥辱にまみれた事件、と言っても過言ではない、前代未聞の事件が起きました。なんと、ローマ皇帝が敵国に捕えられ、捕虜になったのです。
ちょっと話をさかのぼりましょう。
西暦253年、ヴァレリアヌスは皇位を継ぐと、息子のガッリエヌスを共同皇帝につけ、ローマ帝国の西半分を任せました。そして皇位6年目を迎えたある日、自軍を率いてペルシャ国に侵攻、敗れて捕虜となります。慌てたのはローマ帝国です。負けて首を取られたのならまだしも、こともあろうに皇帝が敵国に捕まったあげく、捕虜になったのです。ペルシャ国は皇帝の身代金を再三要求してきましたが、ローマがこれを無視しつづけたので、ヴァレリアヌスは帰って来れませんでした。あわれな皇帝は奴隷にされたとも、皮をはがれて殺害されたとも歴史は伝えます。
皇帝の運命を反映したのか、彼のコインは良いものがありません。銀色はくすみ、彫りは薄く、その肖像はどこか悲し気な表情をしています。
0コメント