ふたたび、ミレ―ナ・ミラーニ
サヴォ―な生まれのミレ―ナ・ミラーニ( 1917-2013 )は不思議な魅力を放つ作家だ。
奇妙なオブジェを作り、未来派の巨匠F・T・マリネッティから「全イタリアの未来派女性の総司令官」に任命されたと思えば、1964年に書いた『ジュリオという名の少女』がわいせつ小説として出版を差し止められ、作家もあやうく投獄されかけた。一転無罪となって小説が出版されるやたちまち15版を重ねるベストセラーとなり、多くの国の言語に翻訳され、のちに映画化もされた。
ミレ―ナ・ミラーニはこれまでのところ短編「エレベーター」しか邦訳がないが、このたびイタリア女性短編集『薔薇のアーチの下で』のなかの一篇として「バスルームの母」が日の目を見る。「エレベーター」で大都市ミラノの妙齢女性の一夜のアバンチュールを描いた彼女は、「バスルームの母」では一転、死病を得た母親をかしがいしく介護する若い女性の心理を淡々と細やかに表現している。
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