「冬の光」あるいは氷河期の愛
アンナ・マリア・オルテーゼ(1914-1998)はローマ生まれの詩人、小説家、旅行作家。最愛の兄エマヌエーレの非業の死をきっかけに執筆業を志した。初期には師事したマッシモ・ボンテンペッリの影響でマジック・リアリズムの文体を駆使していた。数々の文学賞を総なめするなか、主立ったものに1953年『海はナポリを濡らさない』(ヴィアレッジョ賞)1967年『貧弱さおよび単純さ』(ストレーガ賞)1986年『イグアナ』(フィウージ賞)などがある。彼女の創作の源はナポリだが、生涯のほとんどをジェノヴァ近郊の町ラパッロで暮らし、そこで一生を終えている。
収録作品はイタリアの女性作家の作品のアンソロジー『女性作家集1.』(1989)から選ったもので、初出は確認できない。異常気象の夏を迎え、世界がマイナス25度に凍りつくなか、人々はじょじょに崩壊していく精神に怯えながらも来たるべき「太陽の爆発・消滅」を夢見ている。氷河期においても男女の恋愛は果たして可能か? 近未来の世界を描く、背筋の凍りつくようなSF作品である。
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