マグリスの妻

「目の粗い、魔術的な模様が水面を移ろうのを、鏡をのぞくようにわたしは見ていた。やがて気づいたのは、それがじぶん自身の姿だということだった。。」と、マリーサ・マディエーリの唯一の短編集を引用しながら、クラウディオ・マグリスはストレーガ賞受賞の代表作品『ミクロコスミ』に書いている。


マグリスは大学でマリーサ・マディエーリ(1938‐1996)と出会い、のちに結婚した。マリーサ・マディエーリはクロアチアからの移民で、幼少のころはトリエステの難民キャンプで暮らしていた。彼女の短編集『水面に映る緑』には、暗いばかりの過去ではない幼少期の思い出が、美しいものとして書き綴られている。


マリーサ・マディエーリ・マグリスの「四月」には子どもを授からなかった女性の晩年のすがたが淋しく、愛おしげに描き出されているが、実際の彼女は二人の子供をこの世に残している。彼女は後年看護のボランティアに身を投じた人であり、生涯、自身のアイデンティティを求めてペンを取った作家でもあった。58歳で他界。

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