Un Grande Amore
先日、出版社から編集者を通していぜん翻訳した短編の原作について尋ねるメールがあった。アンソロジーに収録するにあたって、版権を取得するためだ。
原作者はある時期まで海外で最も広くその作品が読まれたイタリアの人気作家だが、ぼくの翻訳した作品は単行本未収録のものであり、当時調べたときにもアンソロジーに入っているだけだったので、その旨を伝えた。しかし気になったので昨夜もう一度イタリアのサイトから探ってみると、アンソロジーに収録される2年前に「effe」という雑誌に未発表作品として収録されていることがわかり、そのことを追加で編集者に知らせた。そのサイトには原作がそのまま載っていた。しかし、どうもおかしい。そこで手元にある原作と読み比べてみると、雑誌掲載のものと主人公の名前を含めてずいぶん異同のあることが判明。そこでこう推理した。作者はさいしょ短編としてこの作品を書いた。そして雑誌に発表。しかしその2年後にアンソロジーに収録されることになって、これを後にオムニバスに編むか長編にしようと企画した。しかしその機会を得ないまま、こんにちまで単行本未収録作品として宙に浮いている。
この短編はアンソロジーの一作として日本で出版されることになった。しかしイタリア本国では「effe」もアンソロジーもマイナーな出版社から出ており、しかも地域限定出版らしい。なので、日本でこの作品が出版され、広く読まれることになると、この作品はイタリア本国の読者よりも日本の読者のほうにより広く知られることになる。ー作品をめぐる、ちょっと奇妙な因縁話である。
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