今日はハドリアヌス帝の誕生日

 《コインが語るローマの歴史》 ハドリアヌス帝

 帝政ローマの皇帝でもっとも有能な者はと問われたら、やはりトラヤヌス帝でしょう。でも、彼の何十倍ものページを持って後世にその魅力が伝えられたのは、次世代の皇帝ハドリアヌスでした。

 プブリウス・アエリウス・ハドリアヌス(76-138)は西暦76年の1月24日にヒスパニア(現スペイン)で生まれました。皇帝の生涯は、欧米ではマルグリット・ユルスナールの史伝『ハドリアヌス帝の回想』、わが国ではヤマザキマリの漫画『テルマエ・ロマエ』でおおよそ知られていますし、その業績や性癖を語るとなると、かなりの連載を覚悟しなければなりません。そこで、ここでは彼の発行したコインを見ることで、彼の国境巡察の旅を忍ぶよすがとしましょう。

 ハドリアヌス帝は21年におよぶ治世のおよそ3分の2を、首都のローマを離れて、国境巡察の旅に充てました。トラヤヌス帝の広げた帝国最大の版図を、ゆるぎない、確かなものにしたかったからです。皇帝は現在のエジプトやスペイン、フランス、ドイツを巡察し、その記念に各地でコインを発行しました。(イギリスでは蛮族の侵入を防ぐために、有名な長城を築かせました。)図に見られるように、コインの表には自分の肖像が、裏にはそれぞれ、その地方の風物が刻印され、地域の名前が記されています。たとえばエジプトのコインには、トキやナイル川の神の肖像を見ることができます。皇帝の巡察コインは発行枚数が少ないためか、いまでも人気が高く、けっこうな高値で取り引きされています。

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