『20世紀イタリア短編集』との出会い

私の本棚には『20世紀イタリア短編集』という題名の本が数種類あります。なぜ数種類あるかというと、20世紀末から21世紀初頭にかけて、イタリアの多くの出版社が競うように20世紀に活躍したイタリア作家のアンソロジーを刊行したからです。

1987年にルカリーニ社出たこの一冊は私のさいしょに手に入れたイタリア短編集です。フィレンツェで知り合ったドイツ文学者の片山敏彦氏のご子息、道彦さんから紹介されたもので、650ページもある大著。収録作家も50名、収録作品も62作品もある分厚い本です。

この本はしかし、その後に手に入れた2千ページ、200人以上の作家の作品が収録されている同名の図書に比べると、それほど厚いものでも浩瀚なものでもありません。けれどもこの本は片山道彦さんに紹介された、さいしょのイタリア作家のアンソロジーということでとても思い出深く、大切に思っている一冊なのです。

以前、この本の中から数編を邦訳して『青の男たち‐20世紀イタリア短篇選集』と名付けて出版したことがありました。それから35年以上たった今、水害で傷んでしまった原書を倉庫の奥から取り出してきて、ぽつぽつと翻訳を再開しています。あのころの熱い思いとときめきを思い出しながら。

0コメント

  • 1000 / 1000